ハーバード大学への政府助成金凍結と留学生受け入れ停止の影響

現在、癌免疫学学会TIMO XIX参加のため、ドイツのブランデンブルクに滞在していますが、先日のハーバード大学への政府助成金の凍結に続いて、昨日、研究留学等も含む、全留学生の来年度からの受け入れ停止措置という、驚くべきニュースが入ってきました。幸い、今日すぐに連邦判事がこの措置を差し止めたので、裁判の決着がつくまでは、ひとまず留学生の皆さんはビザのステータスを失わずに済むと理解しています。

多くの皆さんが、私の研究室にも影響があるとご心配してくださっているので説明しますが、私はハーバード大学本体ではなく、主として提携するブリガムアンドウィメンズ病院に所属しています。あまり理解されていないのですが、附属病院はハーバード大学本体とは別の組織である、マスジェネラルブリガムなどが運営しているため、今回の助成金凍結及び留学生受け入れ停止処分からは、病院は除外されています。したがって、私の研究室に限って言えば、ハーバード大学に対する措置の影響は現在はあまりありません。

あまり、と書いたのは、私はブリガムアンドウィメンズ病院を通じてハーバード大学医学部教授のアポイントメントをもらっていますが、同時にハーバード大学公衆衛生大学院の教授も務めているので、公衆衛生大学院からの資金や、そこで長年に渡って運営されており、多くの素晴らしい研究成果を生み出している、Health Professionals Follow-up Study, Nurse’s Health Studyなどのコホートはもっと直接的に影響を受けています。また、研究でコラボレーションしてきた多くの同僚たちが、一夜にして苦労して獲得した研究資金をを失った結果、研究の継続が危機にさらされています。本当に心から同情します。

3月に行われた、我々のチームも参加するキャンサーグランドチャレンジのサミットで、著名な研究者であるボブ・ワインバーグが、アメリカの科学技術研究の強みは、世界から超優秀な人材が研究留学により現場で切磋琢磨してキャリアアップし、研究を進めていることだと話していました。その研究を進める原動力が、政府の潤沢な研究費です。我々医学研究者が主として研究費を獲得している、国立衛生研究所(NIH)を始めとする、多くの政府研究機関が、人件費や研究費のカットに見舞われています。自由の国アメリカはどうなってしまったのでしょう。

一方で、困難な時ですが、私の研究室に留学希望の方がいらっしゃいましたら、現状は本件の影響はなく受け入れることができます。外国人のポスドクがいなければ、ハーバードに限らずアメリカの大学の研究室の多くが研究継続が困難なことを、政府は理解しているのでしょうか。三権分立がしっかりと機能し、法に基づいた決定がなされることを期待しています。

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