英語教育3(我々はなぜ英語ができないのか!?)

日本人が英語が苦手な理由の2つ目は、日本語の弱点に関連しています。

誤解のないように最初に言っておきますが、日本語は素晴らしく高度な言語であり、我々はそれをますます進化・発展させるべきだということです。ただその長所とともに弱点も知っておかねばなりません。

日本語の弱点とは、日本語で使われている音の種類がかなり少ないことです。

調べたところ英語の母音数は約10、子音数は24あります。ということは単純に掛け算して、母音のない子音だけの音、子音のない母音だけの音も入れると少なくとも274種類は音があるということになります。

これに対して、日本語は50音(濁音を除く)と言われており、英語に比べて音の数は少なそうです。更に詳しく調べると日本語の母音数は5、子音数は17(発音記号でなく、一般的なアルファベットで書くとK、S、Sh、T、Ch、Ts、N、H、M、Y、R、W、G、Z、J、B、P)です。私は日本人のラ行はRじゃなくてむしろLに近いと思いますが、ここではRにしておきます。

日本語には母音のない子音のみの音は基本的に存在しません。音の種類は子音のない母音だけの音を入れても、同じように掛け算で最大でわずか90にすぎません。

日本語ではその中で、外来語以外には全く使わない音もあります。例えば、しぇ(赤塚不二夫の漫画、おそ松くんにでてくるイヤミを除いて)、つぁ、つぃ、つぇ、つぉ、いぃ(Yi)、いぇ、うぃ、うぅ、うぇ、うぉ。音が一緒になってしまって、区別がなくなった音もあります。例えば、「じ」と「ぢ」、「お」と「を(うぉ)」、「い」と「ゐ(うぃ)」。「ゐ」はもう使われていません。それらを考慮すると、実際に使われている日本語の音の種類はおよそ80種類くらいでしょうか。

こういうおもしろい学問的考察もみつけました。「日本語の音素(phoneme)は他の言語と比べて遥かに少ない」とあります。

つまり、日本語に使われている音の種類は、英語で使われる音の種類のわずか3分の1以下に過ぎないのです。

そのため、日本語しか聞かずに育った大多数の日本人は脳の発達過程において、限られた言語音声にしか曝露しないので、それに当てはまらない音を聞き取ったり発音したりするのが困難になるのです。これにより、英語に限らず、どんな外国語を学ぶにしても障害に直面するわけです。この国際化時代に、なんというハンディキャップでしょう! 

実際に私がこれを実感するのが、ハーバードの職場や国際会議での会合やパーティーで初対面の人と話す時です。私はいつもアルファベットの綴りを見ずに欧米人を始めとする日本人以外の人の名前を覚えることに困難を感じます。ジョン・スミス、メアリー・ウィルソンとか簡単で広く使われている名前は別ですが。円卓でみんなが簡単に自己紹介しても、下手すると一人の名前も聞き取れなくて、覚えられません。ところが不思議なことに、相手(非日本人)は私の名前を綴りを見なくても、一回聞いただけで、難なく覚えてしまいます。すぐにShujiと呼んできます。皆様の経験はいかがでしょう。これは考えてみると、日本人にとって、国際交流にはとてつもなく不利な点です。

他にも、私はラジオのクラシック系のFM番組が好きで、車の運転中よく聞いていました。よくでてくるアナウンサーの名乗りが「ロン・ダラケー」としか聞こえなかったので、ダラケーって日本語にしたらちょっと注目される名前だなと思ってました。Della Chiesaが本当の名前と分かるまで、かなりの年月が必要でした。ラジオでのニューイングランド・トヨタというトヨタの販売店の宣伝でもコマーシャル音楽で「アソバレ!」としか聞こえなかったのが、Ask Somebody!と分かったのは何度も何度も聞いた後でした。

日本人でも音楽家・ミュージシャンは比較的、音に対する感覚が鋭敏で、そのため語学が堪能な方の割合が多いような気もします。実際、英語の歌は英語の発音ができないとうまく歌えません。

さて、日本語にない多種類の音を聞き取る、発音するのが困難な日本人が英語を学ぶ際によく行うのは、274種類ある英語の音をこの80種類しかない日本語の音に当てはめるということです。それではうまくいくわけがありません。

日本語では同じ発音になっても、英語では別の発音になることはしばしばあります。例えば、Pizza Hut(ピザ屋)とPizza hat(ピザの帽子)は両方ピザハットと発音し書きます。RiceとLice(シラミ)は両方ライスです。

前回にも書いたように、言語の基本は音です。文字は音を書き留めるために、後からできたものです。

大多数の日本人には、その音の種類を聞き分ける力をつける乳幼児・小児の重要な時期に、別の言語の音声に曝露し、その力をつける機会がなかったのです。鉄が熱いうちに打って刀を作るチャンスを逃したことになります。実に悔しいことです!

我々の次世代・次々世代が育つ際に同じ間違いを繰り返すわけにはいかないと思いませんか?

その昔、文字のなかった古来の日本語の弱点を補うべく、中国語から漢字を取り入れ、日本語が飛躍するきっかけになりました。その後、表意文字(漢字)とそこから生まれた表音文字(ひらがな、カタカナ)をミックスするという優れた特性を生み出しました。世界的に見ても最先端の優れた文学(例えば源氏物語)も生み出しました。

同様に現代の国際化時代、インターネット時代の今、日本語の弱点を補うようなシステムを日本に取り入れることを考えるべき時です。

次回につづく

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