イギリス1(Wellcome Genome Campus訪問/タンパク質の名称の標準化)

新型コロナの流行でしばらく外国へ出張する機会がなくなっていましたが、National Cancer Institute(NCI)/ Cancer Research UK (CRUK) Cancer Grand Challenge サミットでロンドンを訪れる機会があり、国際生化学・分子生物学連合(IUBMB)の非酵素タンパク質の名称に関する分科委員会で一緒に委員をしている(過去記事はこちら) Elspeth Bruford博士を訪ねてケンブリッジ近郊にあるWellcome Genome Campusを訪問しました。ここはヒトゲノム研究の総本山として有名な研究所で、私がアソシエイトメンバーを務めるボストンのブロード研究所のように、クロスアポイントメントでケンブリッジ大学などの研究者が所属しています。以前のイギリス出張の際にオックスフォードには訪れたことがあったのですが、ケンブリッジは訪れたことがなかったので、訪問を楽しみにしていました。

Wellcome Genome Campusはロンドン市内からケンブリッジへ向かう電車のケンブリッジより少し手前の駅からタクシーで5分ほどの場所にあるということで、ケンブリッジの大学街から少し離れた場所をイメージしていました。しかし、最寄りの駅には小さいホテルや製薬会社があるのですが、ひとたびタクシーで駅から出発すると、、そこは本当に何もない丘陵地帯。人が住む街も何も見当たりません。写真を撮り忘れたのが悔やまれます。本当にこんなところに総本山の大きな研究所があるのか?と思ったところ、到着しました。

Bruford博士によると、このあたり一帯はWellcome Trustの所有で、開発が制限されているため、小さな村以外何にもないところにあるとのことでした。しかし、もちろんですが研究所の中は最新で広く立派でした。こんな場所にある研究所を訪れたのは初めてでした。

Elspeth Bruford博士とは、定期的にズームで行われる委員会で顔を合わせてはいるものの、直接お会いしてタンパク質の名称問題について意見交換でき有意義な訪問でした。私も他のメンバーも自分の研究などで忙しい合間を縫ってボランティアで行っている委員の仕事ですが、過去記事でも述べたようにタンパク質の名称の標準化は科学界のみならず、一般の市民生活にまで大きな利益もたらす有意義な仕事ですので、これからも皆の意見集約ができるように頑張って行きたいと思いました。しかしながら、毎回の委員会で感じることは、委員の間ですらどのように標準化を進めていくかについて共通認識の形成が難しいプロジェクトであり、多くの人々の不満は生じても褒められることはない大変な仕事だということです。しかし、これからの時代に医療データの分析の効率化のために標準化が必要とされていますので、自分のできることはやっていきたいと感じた次第です。

(写真はその後に立ち寄ったケンブリッジ市街でのものです。)

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