東京医科歯科大学での学術顧問としての講演内容(日本社会の古い慣習)

1月のことですが、東京医科歯科大学にて学術顧問として初めての特別講義をさせていただきました。今年度で2年目に入ります。

私がこのブログを始めたのは、日本の多方面での凋落を海外から実感しており、日本の将来を担う若者にもっと国内外で自分の能力をフルに活用し、活躍してほしいという想いがあったためです。日本には我々の先祖代々受け継がれてきた、他国にはない伝統や魅力がたくさんあると同時に、いわば古びた慣習が脈々と受け継がれ、そのために、近年は特に社会の硬直化が甚だしいと感じています。まずまずの豊かさを手に入れた社会で小さくまとまった若者はますます内向的になり、このままでは国がどんどん衰退してしまうのではないかという危機感を持っています。このブログでも述べてきましたが、私が日本を飛び出さざるを得ない状況になったのも、私の性格が硬直した社会に合わないと思ったからです。

そんな経緯から、時間があるときにブログに自分の考えを書いてきましたが、東京医科歯科大学の関係者の方がブログを発見してくださり、考えに共感して頂いたことで、昨年度より学術顧問を務めさせて頂くことになりました。

東京医科歯科大学の学生や職員の皆様の前で講義をすることが決まり、どんな話をしようか、色々と考えたのですが、これからの日本社会を変えていく力のある若い方々の前で、私の専門分野や研究についてだけ話すというよりも、外国から見て感じる今の日本の問題点や、私がこれまでしてきた失敗と、その失敗からどう立ち直り、逆転させて成功に変えてきたかという話に時間を割く形で話をさせていただきました。その内容をブログにも書いておきたいと思います。

まず先程も述べたように、日本社会には、古い(いわば悪しき)慣習があり、その最大のものが、失敗を極度に恐れる前例主義です。学校に通い始める幼少の頃から、先生から言われたとおりに失敗しないようにするのがいいという精神を刷り込まれ、大人になってからも組織では前例通りに無難にこなす者が評価されてしまうせいで、新しいものが生まれてきません。近年は起業する若者が増加するなど、少しは変化がみられているようですが、まずは小さい頃から大いに挑戦して失敗しても全くよしという教育が必要です。(失敗については以前の記事でも詳しく述べていますので、こちらを御覧ください)

次に挙げられるのは、日本がムラ社会であるゆえに起こる、同調圧力、村八分、悪い意味での他人との比較、出る杭はすぐに打たれるという点です。その結果、無難に人生を歩むことが一番安全で楽ということになってしまい、新しい挑戦を阻むことになります。

また、小学校時代から始まる、年齢による過度の上下関係も問題だと思います。前にも言いましたが、私が常々違和感を感じているのは、中学・高校時代の先輩、後輩という上下関係が50や60のいい大人になっても維持されていることです。同じ立場かそうでないかによって敬語を使うかどうかも決まってきます。これが、上司や年齢が上の人に対して自分の意見を言いづらくしている一因だと思います。たまに、自分より格下だと思った相手には敬語を使わないとか、かなりぞんざいな言い方をする人がいますが、私はそういうのはあまり好きではありません。それならむしろ、大人同士ならよほど親しくない限りは年齢や立場の上下にかかわらずお互い敬語で話すというふうにした方がいいような気がします。過度の上下関係の何が問題かというと、上司などに言われることが絶対で、自分の言いたいことを我慢して不満を溜め込んでしまう人が多いという問題です。不満を溜め込むと結果的に仕事の能率が下がり、物事は発展しません。研究室の会議や国際会議でも日本人はあまり発言をしない傾向にあります。日本人は特に出席者の上下関係などに敏感ですね。上の立場の人間の前では自由に発言できないということでしょうか。英語には丁寧な言い方はあっても、敬語のようなものはなく、お互いが対等でフラットに話すことができるので、建設的な議論がしやすいのではないかと思います。

次回に続く

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